[なぞ]
 バイト中。用を足したくなってトイレに行きました。従業員も客も同じトイレを使っています。
 大きい方です。入りました。
 なぜか水を流すところの近くに、ペットボトルのお茶と、ラップに包まれたたいやきが置いてありました。
 ……なんだかシュールな光景を見たような気がするけど、そこはスルーです。
 頭の中はもう、家なき子
「あんた……だぁいすきだったわよねぇぇ? この便所たいやきっ!!」
 うん。確か映画版家なき子ではこういう台詞があったように覚えてる。

 
 そしたらふと、大判焼きが食べたくなりました。あれに関してはつぶ餡でいいんだよなぁ。実家の近所の広畑さん……まだ店やってるかなぁ……。

 
 便所たいやきはノスタルジィをくれます。



[殺生はいかんのよー]

 店長と後輩があわてていました。お客さんもあわてていました。もう何がなんやらわからないのでぼんやりしていると、「勇者様、これをお使いください」と、後輩からゴキジェットプロを渡されました。
 なんでよりによって、ゴキブリ退治スプレーの中でも一番強力なプロなのかはわからないけれど、「ゴキブリ出たの?」と訊くと、上を指差す後輩。
 そこにはスズメバチが飛んでいます。
 あー。はいはい。
 どうも都会育ちはいかんです。店長も後輩もお客さんも、スズメバチ退治には慣れていないようです。田舎もんは、何度となくスズメバチに教室に襲来されているので、慣れたものです。
 幸い、僕はイモとケが付く虫以外は大丈夫なので、ふわーっとスズメバチに近寄りました。やつは急激に方向転換するけれど、直線速度は電動ガンの速度より明らかに遅い。
「速い。だが、俺には止まって見えるな」
 そんな感じ。
 クロスカウンターゴキジェットプロを見舞いました。

 ここ一年ほど、部屋の羽虫も殺したくない、と僧侶になっていたので、仕事という大義名分によって行った久々の狩猟は、僕のなかの本能を掻き立てました。

 勇者様は執拗にゴキジェットプロ。

 例えるなら、ヴァルキリープロファイルで敵が死んでるのに決め技を四連携させるようなものです。


 ……閻魔様はザナドゥがいいです。