■
[駄文2]
朝の通勤ラッシュ。肉詰めというほどじゃないけれど、余裕があるというほどでもない。
電車の窓から見えるのは、乱立するビル。その隙間を、雨が横一線に駆け抜けている。
あたしは単純に景色が見たいだけなのに、それは視界に入ってくる。窓が鏡のように車内の風景を反射するようになっているのは、何故だろう。おかげで、見て見ぬふりはできない。
女子高生だろうか。制服でないから判断に困るけれど、髪が長くも短くもなく、染めてもいない。そして初々しさ、子どもっぽさも感じられるけれど、ほんのりと色気を纏ってきたようでもある。
顔立ちは整っている。けれど今は、苦しそうに歪んでいる。
背後には、まだ若いサラリーマン風の男が、ほんの少し口元を緩ませて立っている。女の子との距離は近く、腰のあたりはカバンで隠されていて、どうなっているのかわからない。
「やめて、ください」
そう聴こえた気がした。満員電車で人の声が聴こえても不思議じゃない。あたしが見ている女の子が、助けを求めて搾り出した声と判断するのは早計だ。
勘違いだったら、とてもサラリーマンに悪い。偽善者ぶってるとか、他の乗客に思われるのも嫌だ。誰かが代わりに助けに行ったらいいのに。
そうでなかったら、あたしに気づかせなかったらいいのに。
といっても、理由をあれこれと並べ立てて、助けられる人を助けないのは性分じゃない。やれやれとは思いながらも、最初から行動することだけは決めているのだ。
「さて、と」
立ち上がると、周囲が怪訝そうに見てきた。せっかく座れているのに? とでも思っているのだろうか。それとも、助けに行くのか? かな。どっちにしても、期待と好奇心が入り混じった、あまり良い気分がしない視線だ。
けれど慣れた雰囲気でもある。大体がそうだ。みんなが自己犠牲と勘違いしているあたしの行動理念は、過去において幾度となく、他者の期待と好奇心と、嫌悪感とを背負ってきた。
慣れている。いや、慣れていると思っていた。
「なあ、あんた」
後方からの声。小声ではあったけれど、とてもぶしつけな感じと、この世のものとは思えない冷たい感じとが混ざっている奇妙な声。
背中を一瞬、氷が伝った。それぐらいの、無機質な声。
振り返るのを躊躇った。あたしは今から女の子を助けに行くから、構ってられないのだ……とでも言えれば良かったんだけど、正直、怖かった。本能的な部分で恐怖を覚えたんだ。
そしてその予感は、決して外れではなかった。
「俺がもし人を殺そうとしたら。あんたは止めてくれる人間か?」
景色が歪み、電車の振動が消え去った。
なぜか、聴こえないはずの雨の音だけが、耳に残った。
[証明]
三国志がバージョンアップしたとして、ネットの情報だけでは信じない。やはり自分の目でみたこと! それしか僕は信じない!
というわけで証明。
冷蔵庫に入れていない牛乳は、三日が限界。三日経ったやつを飲んだら、そのままトイレに二時間半こもることになる。
おかげで、そんなつもりはまったくなかったのに、もう朝だよ……